1月15日 ボーダーラインを越えていけ

タイトルはブルーボーダーというバンドの歌詞から引用したものなのだが、今日は本の一節から。
真保裕一『ボーダーライン』にこんな会話がある。

 「そうなのかもしれない。でも――少年を立て続けに五人も殺しておいて、
 人は何事もなく平穏に生活を続けていけるものなんだろうか」
 「違うな、サム」
 関口は人差し指を振り上げてみせると、確信ありげに言った。
 「彼は少年を次々と手にかけていたからこそ、
 平穏に何事もなく暮らすことができていたのかもしれない。だろ?」

こういう考え方したことなかったけど、その通りだと思った。

性欲に支配されているとき、自分が通常と同じ行動パターンにそって動いているかといえば、そうではない。
睡眠欲、食欲もしかり。眠たい時は、周りからも分かるくらい通常と違った状態になるし、おなかがへってくるといらいらしやすくなる。
欲求が満たされないと、それを満たそうとして、満たされている状態とは違った行動をとるようになる。
そして俺らはおそらく、満たされている状態を「正常な状態」と考えている。

睡眠欲、食欲は偏りがあっても大して(食欲は時に危ない)問題にならないだろうけど、性欲は違う。
対象の幅が広すぎるし、相手がいる。
俺は普通に女の人に欲情するけど、男でも男にしか欲情しない人もいる。男と女の両方に欲情する人もいる。
幼い子供にしか欲情しない人も入れば、おじさんおばさんにしか欲情しない人、太った人痩せた人にしか欲情しない人もいる。
動物にしか欲情しない人や、死体にしか欲情しない人もいる。

俺は「正常」で幸せだ。
そして、「正常」で無い人を哀れに思う。
気持ち悪い、怖いといった感情は無い。彼らは自分の延長線上にいる気がするから。
法律や、社会的道徳、自分の中でのモラルに反する事柄が自分の中にあること、それはまっとうに生きようとしている人にとっては、ものすごくやっかいなものだとおもう。
それは解消されえない。彼らの「正常な状態」は社会的に「異常」なのだから。

こういうことを考えていると、俺はいつも古谷実の『ヒミズ』を思い出す。
ボーダーラインの上にいる人間が沢山登場する。

『ヒミズ』のような極端なものじゃなくても、こういう自分と社会とのズレのようなものを皆どこかに抱えているんじゃないのか?
Commented by TRUNK MAN at 2006-01-18 22:01 x
 タイトル見たとき、ドキッとしたよ(笑)
 あなたと宗教社会学のことに関してメールしたけれど、端的に言ってしまえば、今回の記事のようなことを考えるのが、俺がやっている社会学です。そして、ボーダーラインのアイロニカルで道化的な実践が、ルナPだったのです。少なくとも俺の中では。
 ただ最近は、シニックにかつアイロニカルに生きられるのは、それ以前のベタな葛藤があるからってことを、ときに社会は、そして自分も忘れがちになるのではないかと思うのですよ。その辺のアイデンティティの現代形・自己の自己に対する対峙の様を描き出していくのが、俺の研究テーマなのです。
Commented by hoshimasato at 2006-01-21 07:22
TRUNK MANさんがやってることが今回の記事のようなことならすごく興味がある。
TRUNK MANさんの書き込みを今は完全には理解できない俺ですが(意味すらわからない単語もある)、いつかは分かるようになりたいのです。

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by hoshimasato | 2006-01-17 05:13 | Comments(2)

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