僕みたいにツテで入ってくる人ももちろんいる。
でも違うケースを考えてみよう。
例えば、教育関係の職を志望する学生や若い人がいるとする。
教員免許を持っている彼はまず教員の採用試験を受けるだろう。
仮に教員採用試験に落ちると、県の臨時採用教職員の職を求める。これは初任者とほぼ同じ待遇で、担任も持てるらしい。
それでだめなら市の単独事業である英語活動指導員、少人数指導非常勤講師、配慮児童生徒支援非常勤講師などを受ける。
それにもなれなかった人が学童に来る。
この話は、教育委員会の人が話してくれたことだ。
能力がどうこう言いたいわけではない。
それらの人は、本当は違う職に就きたい人で、もっと高い給料を求めている人だ、ということだ。
あくまで腰掛で、上の席が空いたらそちらに移りたい、と思っている人なのだ。
なので、とても定着率が悪い。当然だ。
少し大田原の学童の運営の話をしたい。
大田原市の多くの学童は公設公営から、公設民営に移行したという歴史があるようだ。現在、運営の主体は、自治会長さんたちや、地域の教育関係者、学童の保護者会長などからなる運営委員会となっている。しかし、運営委員会の方々は、総会の際に集まってもらうほか、イベントに顔を出していただく、といった関わりしかなく、実質は名前を借りているだけ。
実際には、保育料や市からの補助金を含めたお金の出し入れや帳簿つけなど、運営の多くの部分を指導員が担っている。とても5時間で終わる仕事ではない(とくに主任)。保護者が運営している学童や市が運営をしている地域の学童では、指導員さん達が子どもたちについて打ち合わせをしたり、記録を取ったりして子どもにとってより良い学童を作るために使っている時間や指導員の専門性を高めるのに使っている時間を、大田原では事務に当てている。専門性向上のための時間を取れていない現時点でも、多くの指導員が1日5時間の枠から出た時間を無償で働いているのだ。
だが、主婦層の指導員はそれでいいと思っている人が多い。
彼女たちは旦那さんの扶養の中に入っているからだ。
扶養控除には、所得税と社会保険の話があるが、今問題にしたい部分は社会保険のことなので、そちらについて話す。収入が一定以下の人は、社会保険料を払っている人の扶養家族となることで、保険料を払わずに保険給付が受けられる仕組みがある。
細かい条件はあるが、基本的には年間の所得が130万を超えてしまうと、自分で社会保険料を払わなくてはいけなくなる。現時点では、主任の給料でおそらく年間120万を超えるので、昇給すると130万に届いてしまう可能性が出てくる。彼女たちが正当に働いただけの給料をもらうと、逆に払わなくてはならないお金が増えて、結果収入が減ることになる。
仮に保険料を払ってもプラスになるくらいの給料にするには、一気に180万円くらいまで賃金を上げなくてはいけないが、彼女たちは家の事をやりながら、二束のわらじで指導員をしているため、これ以上勤務時間が伸びたり、仕事量が増えるのは避けたい。
なので、主婦層の指導員から昇給を求める声は、全くと言っていいほどない。
続く