見た場所:部屋、DVD
一言:アイデアを完璧に生かしきっていると思う。すごい。
バタフライ効果について俺が知っていたのは、
「(ここでの?)蝶の羽ばたきが、アメリカの西海岸で台風を起こすこともある」というものでしたが、
いろいろあるみたいですね。
ウィキペディアのバタフライ効果の項目
を参照してください。
古谷実が「人生をやり直すスイッチがあるとしたら押すか?」
というテーマを何度も何度も描いているんですが、このテーマって好きです。
誰しも「あの時こうしてれば」という後悔を、少なからず持つと思う。
だからそれを現実に出来るようになったときに、
エヴァンがケイリーや周りの人たちを幸せにしようとして四苦八苦する様は
人が人を幸せにすることとはどういうことなのかを考えさせられる。
バタフライ効果について歌った歌
アナログフィッシュ「バタフライ」はいい曲です。
あわせてどうぞ。
※以下ネタばれあり※
タイムトラベルと記憶喪失を組み合わせているのがすごい。
エヴァンが最初に生きている人生の記憶喪失は、
未来の自分がそこに入り込んでくるから。
未来で自分が行う行動ゆえに、そこに至るまでの未来が確定されるという、トリッキーな設定。
(現在A)→(記憶喪失の時間B)→(時間C)→(日記を読んで記憶喪失の部分へワープD)→(時間E)
通常の時系列通りにいけば以下のように時間は流れる。
A→B→C→D→E
だけど、エヴァンはBの時の記憶がないので、エヴァンが体験する順番としては
A→C→D→過去B→E
となる。
C、Dという未来を経てからのBなので、各記憶喪失に対して1度目のタイムワープではエヴァンがとる行動がすでに決まっている。
Bの行動をとった故にC、Dの現実がある、ということになる。
だから1度目のタイムワープは、過去に戻っているというよりも、
忘れていた記憶が戻ってきているだけのように感じる。
記憶喪失する場面も、子どもにとってショッキングなことが起こる場面が多くて、
受け入れたくない記憶を子どもが消去してしまうことと似ている。
ここまでだと忘れていたことを思い出すこととの違いはそんなにないんだけど、
これにタイムワープ2度目以降とパラレルワールドを重ねてくる。
A→C→D→過去B→E
だったはずのエヴァンの体験。
Bに戻ったとき、Bと違う行動B'をとることで
A→C→D→過去B’→F
に変えてしまう。
外側から見ると、
A→B→C→D→E
のEにいたエヴァンが、
A→B’→F
のFのエヴァンになる、と。
これを延々繰り返す。
厳密に言うと、パラレルワールドを都合良く使いすぎな気はするんです。
刑務所の中で、神を信じている屈強な男に助けてもらうため、
子どもの頃に戻って自分の両手を串刺しにして
未来の自分の手に急に現れる傷を、聖痕と思いこませる、ってシーン。
バタフライエフェクトというテーマに乗っ取るなら、
エヴァンが手を串刺しにしたことで起きた影響が、
エヴァンが刑務所に入る、という未来を変えていてもおかしくない。
それとも、刑務所に入るって部分だけは一緒で、刑務所の外のエヴァンの友人関係とかがガラッと変わっているのかね。
まあ、こういう部分は後半勢いに乗っているところなのであまり気にならない。
物語に入ってしまえれば、辻褄なんてどうでもいい。
過去の出来事と今の現状を
「初期条件のわずかな差が時間とともに拡大して、結果に大きな違いをもたらす」 というカオス理論にあてはめて物語を作っているんだから、
どこを初期条件、どこを結果とするかは、意図どおりに汲んであげるべきなんでしょう。
同じような疑問を昔感じたことがある。
うろ覚えなのだがドラえもんの確か1巻で
のび太のひ孫(?)のセワシくんがドラえもんを連れてくるときに、
ジャイ子と結婚している未来の写真を見せられる。
そこで、しずかちゃんと結婚する未来に変えよう、とするわけだけど、
のび太は「自分がしずかちゃんと結婚したらセワシくんが消えてしまうのでは?」と考える。
そこでドラえもんがこんな説明をする。
「船でも飛行機でも電車でも、同じ目的地には辿りつくんだよ」
これが、どこを初期条件、どこを結果とみるか、って問題とおなじ問題をはらんでいる。
疑問に思ってたのは、 「船に乗る」ということを結果、目的地として置いてみると、
「どんな方法をとっても船には乗るんだよ」ってことになってしまう。
もしかして、ドラえもんは「同じ目的地に“辿りつくんだよ”」ではなくて「“辿りつけるんだよ”」と言っていたのかなぁ。
自分が狙っている未来(のび太がしずかちゃんと結婚して、なおかつセワシが生まれる未来)を作れるってことだったのかな。
タイムワープをすればするほど不幸になっていくエヴァンに対して、
ドラえもんの楽天的さといったらないね。
タイムマシンってのが作られない理由は、
小学生の時に読んだ藤子・F・不二雄「異色短編集 第1巻 ミノタウロスの皿」の中に入っている
『T・Mは絶対に』という作品が真理を突いていると思う。
他でもこのオチは使われていそうだけども。
脱線に脱線を重ねましたが、ここら辺にしときましょう。